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生命の始まりー2

「生命とは何か」という問いでは、個体を維持する「代謝」と、種を維持する「自己複製」の2つの機能を持つものと説明されました。
代謝は化学反応の連鎖であり、その化学反応を促進する装置(触媒)として働くのが、タンパク質(酵素)です。
また自己複製は「DNA(デオキシリボ核酸)」と呼ばれる高分子化合物が行います。
DNAは、自己複製を行うための設計図です。
タンパク質が作られるためには、その設計図であるDNAが必要ですが、一方で、DNAが複製されるためには、タンパク質が必要です。DNAは化学反応を促進する機能を持たないので、代謝ができないからです。
タンパク質とDNAは、いわば「ニワトリと卵」の関係にあり、最初の生命になるには、どちらかが先に単独に出現したのではなく、同時に、個体とその設計図が誕生したという、ありえない仮定に科学者は、悩まされることになったのです。

さて、DNAと、よく似た高分子化合物に「RNA(リボ核酸)」というものがあります。
実はDNAが複製されるときに、先ず、DNAの遺伝情報をコピーしたRNAがつくられ(転写という)、その遺伝情報を基にタンパク質が作られます。
DNAは主に核の中で情報の蓄積・保存を行い、またRNAはその情報の一時的な処理を担うという役割分担があります。またRNAはDNAと比べて、必要に応じて合成・分解される頻度が高く、したがって相対的にDNAは安定しているというのが特徴です。

1980年代の初め、 特別な能力を持つRNAの一種が発見されました。
このRNAは、遺伝情報を持つと同時に、タンパク質のように、化学反応を促進する装置としても働くことができるRNAで、「リボザイム」と名づけられました、リボザイムは、リボ核酸のリボと化学反応を促進する酵素、エンザイムとをあわせた造語です。
つまり、リボザイムは、タンパク質とDNAの機能の両方を併せ持つのです。

かくして、代謝機能と自己複製機能を併せ持つリボザイムは、DNAとタンパク質との「ニワトリと卵」の問題を解決することができると考えられたのです。
これをもとに、生命の誕生のシナリオが、より現実性を帯びることとなりました。

1.原始地球では、DNAやタンパク質の前に、まずRNAが出現した。
2.RNAの中から自己複製ができるリボザイムが現れた。リボザイムは「代謝」し、そして「自己複製」する。RNAによる生命世界「RNAワールド」の出現である。
3.リボザイムはリン脂質の合成反応を促進する機能を獲得し、RNAが細胞膜に包まれる。
4.続いてタンパク質の合成反応を促進するリボザイムが現れ、細胞には、RNAとタンパク質が包まれるようになった。タンパク質には、リボザイムでは出来ないような化学反応促進機能を持つものが現れ、細胞内の化学反応が多彩になった。
5.さらにリボザイムは、DNAを合成する機能を獲得した。
やがてRNAは、より安定したDNAに遺伝情報を保持する機能を譲った。
6.DNAによる自己複製と、タンパク質による代謝機能を持つ現在の生命へと進化した。

最初の生命をRNAとする「RNAワールド仮説」は現在、多くの研究者によって指示されていますが、異論もあります。その一つに、RNAのような分子が、最初から自然に作られるのは複雑すぎるとして、「生命はタンパク質から始まった」とする仮説があります。
1.アミノ酸の中でも、構造が単純な4種類のアミノ酸が作られる。
2.これらのアミノ酸がランダムに結合し、でたらめなタンパク質ができ、わずかながらも化学反応を促進する機能を持った。
3.やがて出現したタンパク質が、自身と似た分子を作る「擬似複製」が始まった。
4.多彩な機能を持つタンパク質が現れ、RNAなどを合成できるようになった。
5.RNAが持つ遺伝情報に基づいて、タンパク質を合成することが出来るようになった。

これは、最初にタンパク質が出現し、最初の生命が誕生したとする「タンパク質ワールド仮説」の一つである「GADV仮説」による説明です。
最初の生命についての探求は、まだまだ続くようです。

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生命の始まり-1

この地球上には、さまざまな生物が満ち溢れています。まさに生命の惑星ということができますが、では、いったい生命とは何なのでしょうか?
生命の定義は研究者により、多少の違いがありますが、一致していることは次のことです。

まず「個体を維持する機能」を持っていることです。
すなわち、材料とエネルギーを外部より調達して、自らの体を構成する部品を作り出し、そしてこれを維持する。これを「代謝」といいます。
次に生命は、「自分自身と同じものを作る機能」を持っています。親が子を作り、「種」を維持する。これを「自己複製」といいます。
生命とは、個体を維持する代謝と、種を維持する自己複製の二つの機能を持つものです。

では地球上の生命は、一体どうやって誕生したのでしょうか?
1953年、アメリカのスタンレー・ミラー博士はメタン、アンモニア、水蒸気を満たしたフラスコの中で電気の放電を繰り返し行いました。実験装置で、原始地球を見立てたのです。
何日かたつと、フラスコには、アミノ酸(タンパク質の材料)や塩基(DNAやRNAの材料)などの有機物が合成されていました。
それまで、アミノ酸などの化合物は、「生物だけが作ることのできる特別な物質」であると考えられており、この実験は衝撃的でした。その後、多くの研究者たちが、同じような実験を始め、生命誕生の謎の解明に挑むこととなりました。
そして現在では原始地球の大気主成分は、メタンやアンモニアなどの反応しやすい分子ではなく、窒素や二酸化炭素などの反応しづらい分子だったと考えられているため、電気の放電ではなく、宇宙線を模した陽子ビームを、これらのガスに当てて、複数のアミノ酸が作られることが確かめられています。

こうして有機物が地球上で合成されることが解りましたが、地球上だけではなく、地球外すなわち宇宙から、有機物がもたらされることも解ってきました。
1969年、オーストラリアに落ちた隕石から、アミノ酸が発見されました。
さらに1986年、ハレー彗星探査機が、彗星の組成を調べた結果、そこに複雑な有機物が存在することを突き止めました。
2006年にはNASAがカナダに落下した隕石から、中に空洞を持つ球状の有機物を発見したと報告しています。他にも宇宙に有機物が存在する発見は相次いだのです。

このようにして、地球上で作成された有機物、あるいは地球外で作成され、地球に飛来した有機物など、生命誕生に欠かせない材料の存在は確認された、ということができるのです。
では、これらの有機物から、どのようにして生命は誕生したのでしょうか?

最初の生命が誕生したのは、「海の中」ということで、研究者の意見は一致しています。
水は、複雑な化学反応の組み合わせである生命にとって欠かせない場所です。
海のどこで、どんな条件で?
現在の有力な考えは、「深海底に噴出する熱水」の中で、という説です。
海底には、地下のマグマによって熱せられた海水を、海に噴出する「熱水噴出孔」とよばれるものがあります。この熱水噴出孔では、生命誕生に好都合な環境が存在します。
熱水と共に噴出するメタンやアンモニア、そして各種の鉱物が存在すること、そして高温度、高圧力の環境にあることです。
アミノ酸をつないでタンパク質を作る化学反応は、通常の水の中では起こりませんが、高温高圧の環境の中で起こると考えられるのです。

しかし、生命の誕生には、まだハードルが、いくつもあります。
タンパク質ができたとしても、生命となるためには、さらに複雑な化学反応が必要です。
それには、さまざまな化合物が、狭い空間に閉じ込められ、凝縮される必要があります。
そのために、何らかの膜が作られて、その中にさまざまな化合物が凝縮されたのでは、と考えられています。そしてその膜は「リン脂質」という分子でできたとも、また「タンパク質」でできた膜ともいわれています。  

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フラーレンとカーボンナノチューブ

フラーレン (fullerene) は、数個から数十個ないしそれ以上の、炭素原子のみで構成される閉殻空洞状の構造をもった炭素の同素体です。同素体とは「同じ原子で構成されていて、原子の配列(結晶構造)や結合様式の関係が異なる物質」をいいます。
ダイアモンドやグラファイト(黒鉛)などが、フラーレンと同じ炭素同素体です。
フラーレンにはいくつもの種類がありますが、代表的でもっとも知られたものが、炭素原子60個で構成されるサッカーボール状の構造を持ったC60フラーレンです。

フラーレンが発見されたのは1985年です。米英の研究者チームが、真空状態でグラファイトにレーザー光線を当てて蒸発させて、グラファイトが炭素数個から数十個の断片(クラスター)に砕け散る様子を調べていたところ、このクラスターの中に、C60フラーレンを偶然発見したのです。

左がC60フラーレン、右がカーボンナノチューブの構造です。(Wikipedia)
フラーレン.jpgnanotubes.jpg

そして1990年に、炭素の電極をアーク放電によって蒸発させると、電極の「陽極」側に溜まった堆積物に、C60が大量に含まれていることが発見されて、C60フラーレンの大量合成が可能になりました。
フラーレンという名の由来は建築家バックミンスター・フラーの建築物であるジオデシック・ドームに似ていることから、フラーの名をとって名付けられました。

さらに1991年、日本人研究者が、その方法でフラーレンを観察しようと、陽極と反対の「陰極」側に溜まった堆積物を透過電子顕微鏡という装置で観察したところ、球状のフラーレンとは全く違う、からみ合った細長いチューブ状のものが、その詳細な構造まで観察されました。これが「カーボンナノチューブ、CNT」の発見です。
ナノチューブの由来は、その直径が0.4~50n(ナノ)mというサイズだからです。
CNTの発見当初は、フラーレンの一種と見られたりしたのですが、その後、大量合成法が見つかったのと、その特性による用途の多さから、今ではフラーレンよりも注目される物質になっています。
因みにナノチューブと呼ばれる構造は、CNT以外にも、ケイ素や窒化ガリウムなど、多くの物質によって作られたものが発見されています。

ベンゼン環などの六角形を作る炭素同士の結合は、原子結合の中でも最も強いといわれます。その六角形が蜂の巣のようにつながった構造をしているのがグラファイトです。
そしてC60フラーレンは、20個の6角形の環と12個の5角形の環が繋がった球体で、とても強固な構造になっています。
CNTは一様な平面のグラファイト(グラフェンシート)を丸めて円筒状にしたような構造をしています。つまり全体がこの最強の結合で出来ているので、極めて強い構造なのです。

この二つの物質の主な特徴を挙げると、
フラーレンは物理的に極めて安定で、水や有機溶媒に溶けにくい性質を持っています。
そのため、この物体単体の利用開発が妨げられていますが、化学的に活性や反応性などの機能を変化させて水溶性を増すと、様々な物質と反応することが知られています。
応用は、半導体材料としての研究や、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の特効薬としての利用が進められています。また活性酸素やラジカル(不対電子をもつ原子や分子あるいはイオン)を消去する作用により、美肌効果や肌の老化防止効果があるとされており、美容液やローションなどに配合されています。

CNTでは、その構造によって電気伝導率やバンドギャップ(半導体などで利用される物理的特性値)などが変わるため、シリコン以後の半導体の素材として、あるいは集積回路への応用が研究されています。
導電性の高さと表面積の大きさから燃料電池としての応用も進められています。
さらには複合材として用いる事でハイパービルディングや大型の橋梁用ケーブル、自動車、航空機、宇宙船などの、従来物質では不可能な構造物への応用が考えられます。

現在のところ、実際の利用はフラーレンよりもCNTのほうが進んでいて、試しにネット検索すると、CNTでは多彩な企業や研究機関のページが占めているのですが、フラーレンのほうは乳液とか、お肌のケアといった化粧品関係がずらずらと並びます。

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フーリエ解析

三つの波が描かれた下のグラフは、横軸が時間軸で縦軸が波の高さ(大きさ)です。
波が1秒の間に山と谷の繰り返す回数を周波数といい、単位はHZ(ヘルツ)です。
時間軸をフルスケールで1秒とすると、緑色の波は、1秒に2回の振幅ですから周波数2HZ、青色の波は、4回振幅しているので4HZになります。またこのような山と谷が相似形の波を正弦波(サイン波)といいます。そしてピンク色の波は、この二つの波を足し合わせた波です。正弦波でない複雑な波になっています。
フーリエ変換2.jpg
ここで重要な波の性質が現れます。「単純な波を足し合わせれば、どんな複雑な波でも作れる」、またその逆に「どんな複雑な波でも、単純な波に分解できる」というものです。
数式「y=sin x」で表されるサイン波を図の緑色の波とすると、青色の波は「y=sin2x」で、そしてピンクの波は「y=sin x+sin2x」となります。
このように複雑な波でも、サイン波と(サイン波を90度ずらした)コサイン波(余弦波)を足し合わせていけば、表すことができます。サイン、コサインて聞いたことがあるな?
そう、三角関数です。波は三角関数で表すことができるのです。

では複雑な波を単純なサイン波やコサイン波に分解するには、どうすれば?
ここでフーリエの登場です。ナポレオン時代に活躍したフランスの物理学者・数学者のジョセフ・フーリエは、「どんな関数(Xの値が決まればyの値が決まる、といった関係を数式で表したもの)でも、様々なサインとコサインを無限に足し合わせた式としてあらわせる」という発見をしました。このような式にすることを「フーリエ級数展開」とよびます。

フーリエ2.jpg

フーリエ級数のそれぞれのsinやcosを何倍するかを示すa1やb1は「フーリエ係数」と呼ばれ、下の式のよって求めることが出来ます。

フーリエ4.jpg

フーリエ係数を求めることが出来ると、複雑な波であるf(X)の中に「どのような周波数をもった波が、どれだけ含まれているか」を知ることが出来ます。この計算を「フーリエ変換」といいます。フーリエ変換によってフーリエ係数がわかると、もとの複雑な波に、どの周波数のサイン波とコサイン波が、どれだけ含まれるかが具体的にわかります。このようにフーリエ級数展開をしたり、フーリエ変換をすることを称して「フーリエ解析」といいます。

フーリエ解析をして、どのような周波数の波がどれだけ含まれているかをグラフ化したものが、下の「スペクトル spectre 」と呼ばれる図です。横軸に周波数の高低を、縦軸にその強さ、つまりフーリエ係数の大きさを表しています。
なおこのスペクトルには、時間軸がありませんが、時間軸を加えた三次元グラフは「スペクトログラム spectrogram 」と呼ばれます。音声や音楽のように短い時間にその構成要素が変わっていく事象を表すのに使われます。
    スペクトグラム.jpg
フーリエ解析は、大変面倒な計算を大量に行わなければならないのですが、実は自然界には、フーリエ解析と同じような働きが多く見られます。
一例は人間の耳です。耳に入ってきた音波は、鼓膜を振動させ、そして鼓膜の奥の蝸牛管(かぎゅうかん)を揺らして、その中に満たされたリンパ液を振動させます。
蝸牛管には「聴覚細胞」である有毛細胞が並んでいて、それぞれが異なった振動に反応します。つまりリンパ液の複雑な振動を周波数成分に分解し、そして各有毛細胞からの情報が内耳神経に伝達され、大脳の聴覚皮質で、スペクトログラムを構成しているわけです。

もう一つの例は「虹」です。白く見える太陽光は、実際には様々な周波数の電磁波が混ざったものです。太陽光が大気中の水滴に入ると、周波数によって屈折率が異なるため、光が水滴から出て行くとき、七色の光に分解されて見えるのです。
視細胞5.jpg
といいましたが、実は七色に分けているのではなく、ただ周波数成分を分けて(分光)いるだけで、色を付けているのは、人間の「視覚」です。
ヒトの網膜には、可視光線の長波長に反応する赤錐体、中波長に反応する緑錐体、短波長に反応する青錐体の三種類の視細胞があります。それぞれの細胞は、特定の範囲の波長に最も反応するタンパク質を持っているのです。
可視光線を受けた三種類の錐体からの信号が、視神経を経由して大脳の視覚連合野に入り、ここで各錐体からの情報の相対比や位置を分析して、色を知覚している仕組みです。
つまりどのような波がどれだけ含まれているのかということを解析して、それを色のスペクトルに構成しているのは、大気中の水滴と人の視覚との両方の作用によるのです。数学的演算は全く行われない自然のフーリエ解析の仕組みです。

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進化と進歩はどう違う?

「進歩」という言葉の代わりに「進化」が使われるのが普通になっているようです。
「進化」には「進歩」の意味を持つと同時に、環境や時代に適応したというような価値判断があるからでしょうか。より高度に複雑に、なんていうことまで含意しているような?
でも本来、「進化」は生物学で使われる用語で「変化」の意味であって、「進む」というような方向性はありません。英語のevolutionを日本語に翻訳するときに、進化という語が作られて、「進む」という意味合いを持ってしまったのですね。
英語では進歩はprogressとかadvance、進化はevolutionで、紛らわしくはありません。

ところが、進化の原語のevolutionは、生物学の用語であると同時に、日常語として、展開、発展、進展といった意味で使われているのです。
また生物学用語としても変化していて、初めは生物学の一部門である発生学で、evolutionは 「受精卵から展開して成体が作られること」を意味しています。
発生学とは「胚の発生を研究する学問」です。「胚」とは動物では誕生や孵化の前の段階をいい、植物では発芽の段階にある全ての組織のことです。

さらにその後、生物学では個体の発生と生物の進化との類似性が注目され、「進化はある一定の方向に発展する」と考えられました。
初期の進化論者として知られる生物学者 ジャン=バティスト・ラマルク は、進化は常に単純な生物から複雑な生物へと発展していくような、「一定の方向をもつ必然的で目的論的な過程」だと考えていました。そしてそれを表すのに適切な語として、evolution が用いられました。つまり、かのチャールズ・ダーウィン以前の進化説では、evolutionは発展という意味を持っていたのです。

しかしダーウィンは著書「種の起原」では、初版ではevolution という語は使っていませんでした。進化を指す言葉としては、「descent with modification(変化を伴なう系統)」を使ったのです。
自己の進化論が、発展理論に基づく以前の進化論と異なることを明確にするために、evolution の語を使わなかったのです。後になって結局使ったのですが...
ダーウィンは、進化の要因として「個体変異の遺伝と自然淘汰」を考え、生物の進化は偶然が作用する現象と考えました。彼は生物の進化が、「単純な生物から複雑な生物へと変化するという方向性」を持っているとは考えなかったのです。
つまり、ダーウィンによれば、evolution は生物の進化を指す用語としては(少なくとも初めは)、適切ではなかったといえます。

ということで、もともと evolutionが進歩、発展といった方向性を持つ意味を含んでいたわけで、日本でこの語を訳するに当たって、進化という言葉を作ったのは、あながち間違いではなかったのかもしれないし、今日に至って進歩に取って代わったのも、必然の成り行きなのかもしれません。特に「今より良くなる」という単線的世界観を描き難い今の時代、「適応する」というイメージが強い進化が好まれるのでしょう。
英米でevolution が progress とかadvance に代わって使われることが多くなっているのか、興味あるところです。

しかし生物学では、進化を進歩と同一視するのは、やはり具合が悪いのです。方向性を持ってはいない進化を進歩と同一視することは、進化説を誤って理解することになるからです。
とはいっても進化の語が全く日常語になってしまった以上は、進化を使うのはやめて、例えば変成とか変異とかいった言葉を使ったほうが良いのかも知れません。あ、でもこれらは生物学ですでに使われています。
ダーウィンが当初使った「descent with modification(変化を伴なう系統)」に戻る?

なお、進化とは、簡単にいって「生物が世代を経る中で、その遺伝的形質が変化していく現象」ということです。そして「変異や自然適応、種の分化といった進化のメカニズムによって、ヒトも含めた地球上のすべての生物が生まれてきたことを説明する諸理論の集合」が、現在の進化論、もしくは進化学説です。

進化論が誕生して多くの時が経っているのに、いまだに理解が広まっていないのには、多くの理由があります。
・過去に起こった進化の過程が、部分的証拠しか残っておらず、特にダーウィンの時代には推測や仮定が多く、実証が不十分であった。
・また実験がほぼ不可能であるため、科学として不十分であるという批判。
・進化という言葉を始め、生存競争や適者生存など、誤解されやすい用語が多く使われた。
・適者生存を悪用して、人種的優越性の根拠とする歴史が繰り返された。
・進化学説自体が、それこそ進化してきて、諸説立ち並び、解かり難さを際立たせた。
・「人は猿から生じた」という、ある人々にとっては耐え難く、また非道徳的な話である。


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麹と酵母はどう違う?

「麹」を使った食品が人気ですが、麹って何だ?
そういえば「酵母」なんてのもあったな。どう違うの?
麹も酵母も「真菌」とよばれる分類に属します。じゃあ真菌て何?その前に細胞から。

細胞:すべての生物は「細胞」で出来ています。
細胞の中に細胞核やミトコンドリア、葉緑体などの「細胞小器官」を持つ生物を「真核生物」、これらを持たない生物を「原核生物」と呼びます。
さらにたった一つの細胞の生物を「単細胞生物」と呼び、複数の細胞で出来ている生物を「多細胞生物」と呼びます。真核生物は単細胞と多細胞の生物があり、原核生物は単細胞生物のみで、「細菌(バクテリア)」と、「古細菌(アーキア)」がそれです。
アーキアはバクテリアよりも真核生物に近縁で、DNAの複製やタンパク質合成系といった生命の基幹部分の機構が真核生物に類似しています。

先回の「ミトコンドリア」では、簡単に細菌Bが細菌Aを取り込んで真核生物が出来た、といいましたが、正確にはアーキア(古細菌)と、バクテリア(細菌)の「細胞内共生」によって真核生物が誕生したということになります。そして真核生物が単細胞生物と多細胞生物に分岐し、そこから生物の多様性がもたらされました。

因みにダーウィン以来、生物の多様性の原因は種の「分岐」にあると考えられていました。
しかし細胞内共生によって真核生物が誕生し、そして真核生物が生物多様性をもたらしたのだとすれば、種の分岐ではなく、全く逆の種の「交叉」が、多様性の重要な原因ということになります。つまり進化諸理論のうち、種の分岐にのみ基づいた進化理論は、ここでは成り立たなくなるのです。

真菌(Fungus):真核生物の内、「キノコ、カビ(麹)、酵母」などの生物がこれに当たります。麹はコウジカビとも言われるように、カビの一種なのですね。
真菌は一般的には菌類といわれますが、原核生物である細菌と区別を明確にするため、真菌と呼ばれます。カビでも細菌より進化した生物なのです。
単細胞と多細胞の両方の生物が存在し、麹は多細胞生物で、酵母は単細胞生物です。

細胞.jpg

麹と酵母:麹と酵母は増殖した後の形態も大きく異なります。麹は糸状菌とも呼ばれ、増殖すると「細かい糸がびっしり生えたような形態」を作り上げます。
一方、酵母は増殖しても糸状にはならず、「光沢のある丸い群落状の形態」を作ります。

麹はでんぷんの糖化に優れており、日本では古くから醸造物の生産に役立っています。
日本酒や味噌、醬油は「アスペルギルス・オリゼー」(ニホンコウジカビ)が主に利用されています。
酵母はイーストとも呼ばれ、ブドウ糖を分解してアルコールや二酸化炭素を生じさせるので、酒を作ったり、パンをふっくらさせたりします。
日本酒を作るのにも、酵母は麹と共に使われます。

酒の製造:日本酒は麹と酵母の両方を使います。
まず米を麹の働きによってブドウ糖へと分解します。
そして酵母がブドウ糖からアルコールを生成します。酵母はデンプンを分解できないので、麹がデンプンを糖化してブドウ糖を生成するわけです。興味深いのは、このプロセスが段階的に行われるのではなく、麹と酵母が並行して「発酵」作用を行うということです。
またビールは、大麦を発芽させ(麦芽に変え)ることでデンプンを糖化し、そしてビール酵母によって発酵させます。
ウィスキーも、麦やトウモロコシを麦芽で糖化して発酵させますが、その後に蒸留してアルコールを濃縮します。ビールもウィスキーも、日本酒と同じように、まず糖化してからアルコールを作るわけですが、これを「複発酵」といいます。ただし、糖化に麹は使いません。
ワインでは、原料であるブドウ果汁の中に、すでにブドウ糖が含まれているので、こうした糖化の工程が要らない「単発酵」だけを行います。
ここ書いていると、何か止まらなくなりそうです...

発酵とは:有機物を分解して、生きていくためのエネルギーを得ることです。
その反応で最終的に出来た物質が体外に排出されますが、これが発酵生産物です。
麹も酵母も発酵を行って、日本酒やしょうゆ、味噌などの発酵生産物を作るわけです。
実は発酵を行う生物は、他に沢山あります。
細菌である乳酸菌はヨーグルトを作り、また納豆菌は納豆を作ります。

すべての生物は、なんらかの方法で、生きるためのエネルギーを得ていますが、その方法は大別して発酵、呼吸そして光合成です。細菌やカビ、麹、酵母などが発酵を行います。
発酵というと何か特別な働きに聞こえますが、仕組みは「腐敗」と同じです。人間にとって有用な場合に限って発酵と呼び、無用もしくは有害な場合を腐敗というわけですね。

麹もカビの一種ですけども、人間にとって有用ですから、麹などとも呼ばれるのでしょう。ただのカビではないぞ!というわけ。麹はまた「糀」とも書かれますが、これは「米糀」で、蒸し米に麹カビをつけて発酵させたものです。ふわふわした白い菌糸が、蒸し米を花のように覆っている様子から、「米の花」という日本漢字が作られたのです。

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シンギュラリティって何?

最近良く聞く言葉に、シンギュラリティ( Singularity)・特異点というのがあります。
この用語が一般的に使われるのは物理学や数学で「それまでの法則が適用できなくなる点」といった意味です。例えば宇宙のブラックホールでは「重力場が無限となる場所」がありますが、無限大は物理学では扱えなくなります。
物理学や数学で、この特異点が現れると、学者は頭を抱えることになります。

で、ここでいう特異点は、技術的特異点(Technological Singularity)のことで、米国の発明家・IT工学者のレイ・カーツワイルという人物が、2005年に提唱した考えです。
カーツワイルは、半導体の集積率が18ヶ月ごとに倍に、指数関数的に増加して行くという、いわゆるムーアの法則を拡張した「収穫加速の法則」によって、機械で実現される知能(AI)の思考速度を時系列グラフで表した時、垂直に立ち上がり、人間の感覚でいえば無限大に達したように見える点を、シンギュラリティと表しました。
つまり、人工知能の問題解決能力が、人間を超えて、人間に代わって、この世界の主役の座に着く時点を、シンギュラリティ・特異点という言葉で表したのです。

しかし、グラフで垂直に見えるからといって、それを特異点というのは無理があります。
下のグラフは両方とも、横軸に1期から15期までの時系列、縦軸に初期値2が倍々に増加する値を示しています。左図は通常の算術級数で表示し、右図は縦軸を対数(指数の逆関数)で表示しています。たったの15期で、左図は垂直に近く立っていますが、しかし...
指数関数的2.jpg
私達の回りや自然界には、指数関数的に増えたり減ったりする事例にあふれていて、それを左図のようにグラフ化すると、すぐにグラフは限りなく垂直になってしまい、有用ではありません。なので、指数関数的に増加する事象は、右図のように縦軸を対数表示するのが普通で、実際、カーツワイルも対数表示のグラフを使っています。
しかし対数で表示すれば指数関数的増加は、どこまで行っても直線です。
ではどこに特異点が現れるか?

カーツワイルによれば、2045年には、1000ドルのコンピューターの演算能力が、ヒトの演算能力とされる10ペタFLOPS(1秒間に1000兆の10倍の命令を演算する)の100憶倍になり、「特異点に至る知能の土台が十分に生まれている」ということです。
またヒトの脳のシナプス(神経細胞間の伝達組織)を「100億の極端に遅い伝達速度」とも評していて、要するにヒトの能力を、演算速度と通信速度の面だけで見ていることが解ります。因みにヒトの神経細胞(ニューロン)の数は100億、ニューロンが作るシナプス数は150兆ともいわれています。

カーツワイルの「特異点」は、その後の「ディープランニング(深層学習)」の開発と、その急速な普及を受けて、俄かに脚光を浴びることになりました。そしてディープランニングを超える知能と汎用性を持つ人工知能の概念が、提唱され始めています。
その実現の有力な方法として例えば、人の脳が持つ各種の機能を、対応する機能ユニットとして一つずつ工学的に再現し、それらを正しく情報統合が行えるように、人為的につなぎ合わせることで、疑似的な汎用性を獲得するというような考えがいわれています。

人間を超える人工知能が、近未来に実現可能か?多くの疑問があります。
1.演算速度と信号伝達の速度だけで、人と機械の知能を比較しているのは、あまりに大雑把。計算能力だけでいえば、電卓が世に出た時点で機械は人の能力を超えている。
2.電卓の計算速度が人より優れていることを逆手にとって、人は自分より優れたものを作れるから、超越的能力が現れ、あらゆる問題を解決するというのは、全くの飛躍。
3.ディープラーニングが人間の脳の仕組みに倣った「ニューラルネットワーク(神経回路網)」に基づいているからといって、それは脳の働きのごく一部分に過ぎないし、脳をシミュレートしたことにもならない。第一、神経細胞やシナプスの働きの研究自体、これからというのに、まだ解っていないものを、どうやって超えるなどといえるのか?
4.感情や知性、意識、自我といった、人間である基本的な要素を満たさなくとも、知能さえあれば人間を超えることになるのか?
もちろんこれらの特性は、脳研究でもまだ未知の分野で、解明など先の話だ。
万が一、これらが人工知能に搭載されたとしたら、人と同じように怒ったり、悪巧みをすることになるのか? SFでは人工知能は世界を支配する悪の帝王というのが定番だけど。
5.どれだけ優れていようと、思考だけでは問題を解決できない。
世界の事象を観察、実験し、モデルを作り、検証するには思考速度ではなく、対象物の変化の速度に依存する。
6.あらゆる指数関数的成長は、いずれ止まる。
細胞分裂や生物個体数など、限定された期間内で指数関数的成長を見ることは出来るものの、いずれ限界を迎える。半導体の集積率も、その限界を免れることは出来ず、既にその限界が取り沙汰されている。
7.収穫加速の法則は曖昧で不明瞭。
上記理由から、ムーアの法則を、半導体に先立つトランジスター、真空管、機械式計算機にまで遡って適用し、それぞれの技術の(指数関数的成長の)限界から、次の技術へ「パラダイム・シフト」して移行し、展開していくという、巧妙な指数関数的増加のグラフを提示しているが、計算能力自体ではなく、1000ドル当りの計算能力という単位やプロットの位置も恣意的。また「パラダイム」概念の拡大解釈。
いずれにしても、対数表示された図は「どこまで行っても直線」で、どこにも特異点は現れようがないものを、「人間の感覚では無限大に見えるから特異点」だという、あまり根拠の無い説明、定義?

というわけで、人工知能が人間を超えて超越的な存在になるなんて、まったく無いと断言は出来ないけれど、SF映画や小説の世界の話としか、いいようがありません。
しかし、カーツワイル氏のご宣託による特異点が近づくにつれて、人工知能を開発運用する人々とそれ以外で、極端な経済格差が顕在化すると考え、その格差を是正し緩和するための施策として「ベーシック・インカム」なるものが議論されているそうです。
これは国民の最低限度の生活を保障するため、すべての国民に現金を給付するという考えです。簡単に言えば生活保護をすべての国民に支給するということです。
え!どこからそのお金出るの?国が出すのなら、それって共産主義? 第一そんな財源ありません。それなら、ごく少数の冨裕者と大多数の貧困層に分かれる以上、冨裕者の富を平等に分けるしかないではありませんか? 今からそれに備えて、ベーシック・インカム基金、別名貧者救済基金を、世界の金持達で作る? なんだか誰も納得しそうもない構想です。

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バブルは、あぶく銭!

今から10年前の2008年9月、米大手投資銀行リーマン・ブラザ-スの破綻がもたらした、いわゆるリーマンショックは、世界的金融危機の引き金となりました。
2000年代に、米国において低金利政策のもと、住宅ブームが起こり、住宅価格が高騰し、金融機関が「サブプライム」と呼ばれる、低所得層への住宅ローンを証券化して、投資家に売却するという収益モデルで巨額の利益を上げました。
高度な金融技術を使えば、リスクを分散できるとの幻想で金融資本が暴走したのです。
しかしやがて、低所得者は借金を返済できなくなり、投資商品は価値を失い、その膨大な損失が金融機関に乗しかかり、リーマン・ブラザースが経営破綻したことに端を発して、連鎖的に世界規模の金融危機が発生しました。特にレバレッジ(借金による投資)による多くのマネーが流れ込んでいた結果、その影響も世界的なものとなりました。

しかし何故、ただ一社の破綻が世界危機に至ったのか?
既に前年、米住宅市場は大幅に悪化していて、多くの金融機関が危機的状況にありました。年が明けて、投資銀行のベアー・スターンズが救済買収され、またメリルリンチの買収が決められたりと、金融機関は奔走し、また政府の公的救済政策を含めた対策も立てられていたのです。しかし、救済に多額の公的資金をつぎ込むことに対して「強欲なウォール街を公的救済することは許せない」という批判が大変に高まっていました。
当時のブッシュ政権と議会はこの声に押され、危機への対応が遅れ、結局、リーマンだけが犠牲にされ、多くの金融機関への多額の公的資金の注入によって、破綻の連鎖は避けられました。しかしリーマンの破綻は、米国の経済情勢と公的救済に対する不安を広げ、結局、連鎖的な世界金融危機に陥ったのです。

翻って1980年代末期の日本での不動産バブルは、大蔵省が行った総量規制で、銀行の不動産向け融資が沈静化し、地価が大幅に下がり始め、バブルは破裂しました。
それまで土地神話のもとに、決して下落することが無いといわれた地価が一転、大きく下落をはじめ、以後2005年に至るまで公示価格は下がり続けました。
日本の土地資産は、バブル末期の1990年の約2400兆円をピークに、2006年末には約1200兆円となり、およそ16年間で資産価値が半減したと推定されています。
地価・株価が下落すると共に景気が後退し、金融機関が多額の融資をしていた企業の業績も悪化し、返済が順調に行えない企業も現れました。
金融機関にとって大きな危機でしたが、景気はいずれ回復して、損失も回復できると期待し、債権を処分して損失を処理・確定することを躊躇させる間に、混迷の度合いは深まり、不良債権はその数と額を増して重症化したのです。
ようやく今に至って企業業績や株価は、バブル高騰前に戻したというところでしょうか?

リーマンショックから10年、金融システムは平穏を取り戻したかに見えます。
しかし世界の債務は、リーマン時よりも大きく膨らんでいます。レバレッジ(梃子)やファンドなどを通じて、あふれ出たマネーが、マネーを求めて跳梁しています。
限りなく膨張するマネーを制御するすべもなく、次なるバブル崩壊が、一部では危惧されていますが、あまり省みられることなく、殆ど思考停止状態です。
「バブルは破裂しなければバブルではない」という半ば開き直ったいい方は、その辺の心理状態を良く表していますが、破裂する前に萎むならいざ知らず、膨らみ続ければ破裂するしかないのが、バブル即ち泡の宿命です。日本では昔からあぶく銭といわれました。
では現在進行中と危惧されるバブルの特徴は何でしょうか?

「ITビッグ4」と呼ばれる超巨大企業があります。ご存知、グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルの4社です。頭文字をとってGAFAとも呼ばれます。(マイクロソフトを加えて、ITビッグ5と呼ばれることもあり、この5社は米国株式時価総額上位5社です。)これらのIT巨大企業に代表される新興の急成長企業は、資本市場から金を調達して、もうけた金は投資や買収につぎ込み、ブレーク・イーブン(収支ゼロ)或いは赤字で経営し、会社をタックスヘイブンに移転して法人税を逃れ、ひたすら資本の増殖を図るというようなビジネスモデルが特徴的です。つまりは株式の時価総額を増やすことが企業目標なのです。
マネーがこんな金のなる木を見逃すはずもありません。アマゾンとアップルの時価総額は、1兆ドル!を超えました。さしづめ、時価総額バブルといったところでしょうか?

80年代の日本のバブルは、土地や住宅の不動産価格の上昇によるものでした。またリーマンショックも住宅ローンという不動産バブルに基づいています。
いずれも金融システムの崩壊を招く危機でしたが、当局による巨額の公的資金の注入によって、金融システムの崩壊と、それに続く大恐慌は何とか免れました。
現在のバブルは、さらに実体のないマネーそのものが、膨れ上がるものになっています。
経済は実体経済とマネー経済とに分けて考えられています。それ自体不可思議な分け方なのですが、驚くべきは、後者は前者の十倍とも、それ以上ともいわれています。
まさしく資本が自己増殖する資本主義が、むき出しの姿で世界を跳梁しているのです。

もし、株バブルがさらに膨らんで、破裂するとすれば、どんな形ででしょうか?
一般に破裂の前には、前触れや予兆がみられるます。
一見小さな出来事が引き金となって、連鎖的にどんどん大きな事態になっていくのは、いわゆる「バタフライ効果」と呼ばれる現象に擬せられます。
なんらかの些細にみられる事象、例えば仮想通貨が流失した、ある国から資本が逃避した、というようなことから連鎖して、株式市場から資本の逃避と下落がおこり、資本市場全体の崩壊から金融市場の崩壊、そして実体経済の崩壊という悪夢の連鎖が続くというシナリオは、過去の経験から、最もありそうなことです。
しかし現代は、高度なITやAIが大幅に取り入れられた結果、金融市場を始めとして、資本主義の市場は、ますます不安定化しているうえ、マネーの逃げ足も俊足!なのです。
過去には見られない形での、突然の崩壊が起きるやもしれません。
破裂してから、やっと気が付くバブルの世界...

バブルの破裂と、それに続く悪夢の連鎖は抑えられるか?
軟着陸であろうと硬着陸であろうと、結局のところ公的資金の注入しか効果的方法を見出せない状態は変わっていません。しかしこれは2008年時、「強欲なウォール街を公的救済することは、倫理の欠如だ」という世論が、大きな障害となりました。
それから10年、この潮流は米国では、さらに大きく広がっていて、トランプ政権誕生の一因ともいわれるほどです。持たざる者の怨念は恐ろしいのです。金融機関はおろか、時価総額巨大企業も、だんだんと人々から好かれなくなっています。
来るべき危機の時、こういった流れが危機回避の大きな障害となることが予想されます。
またそれ以上に問題なのは、従前のバブルと違って、その桁違いの大きさから、手が付けられないことになって、世界恐慌という最悪の事態に突っ込んでいく可能性です。


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ミトコンドリアは細胞内生物?

地球上のほとんどの生命は、その活動エネルギーを得るために「酸素呼吸」を行っていますが、酸素呼吸に欠かせないのが「ミトコンドリア(mitochondrion)」という細胞器官です。
このミトコンドリアが細胞器官になったのには、世にも不思議な物語があります。

今から15~20億年前、酸素と糖を使ってエネルギーを作る細菌(Aとします)がいました。
あるとき、別の細菌(Bとします)が細菌Aを、自分の体に取り込んでしまいました。
細菌Aはエネルギーを作る能力が、細菌Bよりずっと高く、Aを取り込むことによって、Bは今までより、ずっと大きなエネルギーを得ることが出来るようになりました。
また取り込まれた細菌Aも、糖と安定した環境を得ることが出来ることになりました。
何とも手っ取り早いやり方ですね。「出来ちゃった婚」てやつかしら?

細菌Aは細菌Bの一器官、ミトコンドリアとなり、そして細菌Bは細胞核や小胞体、ゴルジ体などの「細胞小器官」も内蔵することとなりました。
このような細胞を「真核細胞」といいます。そして真核細胞は多細胞化し、「真核生物」として進化したのです。なお、細胞小器官を持たない細胞を「原核細胞」といいます。
mitokond3.jpg
ミトコンドリアは真核細胞の一器官ですが、その働きはまるで独立した細胞のようです。
真核細胞は核にDNAを持っていますが、ミトコンドリアも独自に遺伝子を持っています。
その遺伝子は、細菌Aがミトコンドリアとなる過程で、大部分が細菌Bの核に移動したため、現在のミトコンドリアには、遺伝子がわずかしか残っていませんが、ともかく独自の遺伝子を持っていて、生物が受精する時、その遺伝子は、精子の一部として卵子の中に入ります。
ところが、理由は明確には解っていないのですが、精子のミトコンドリアは卵子の中で分解されてしまい、したがって卵子のミトコンドリアDNAのみが複写されるのです。
つまり、ミトコンドリアDNAは、必ず母親から子に受け継がれ、父親から受け継がれることはないのです。
このことから「ミトコンドリア・イブ」と呼ばれる「現生人類の最も近い共通女系祖先」という大変興味深い仮説が立てられますが、今回は触れません...

で、「ヒト」の体は、60兆個の細胞で作られています。
その細胞の中には、多くの細胞小器官が内蔵されていますが、もっとも重要なものは、ミトコンドリアです。その数は、1細胞当たり100~3000個で、重さではヒトの体重の10%、体積では20%に達するといいます。
エネルギーを必要とする細胞ほど、ミトコンドリアの数が多く、ヒトでは心筋細胞や骨格筋細胞、神経細胞などでその数が多いのです。
この膨大な数量のミトコンドリアが、細胞の中で、融合したり、分裂をしたり、またミトコンドリア同士で、物質のやり取りをして、共同作業をしています。

ヒトの体内では「ATP(アデノシン3リン酸)」という分子を、エネルギー源として利用しています。ヒトは食べ物のエネルギーを直接使うことが出来ず、ミトコンドリアが、食べ物のエネルギーをもとに合成したATPを利用しているのです。
ATPは生体内では、リン酸1分子が離れたり結合したりすることで、エネルギーの放出・貯蔵、あるいは物質の代謝・合成の重要な役目を果たしていて、ヒトに限らず、すべての真核生物が、これを直接利用しています。

さらにミトコンドリアの重要な働きの一つに「アポトーシス」(枯葉が木から落ちるというような意味)と呼ばれる「プログラムされた細胞死」というものがあります。
細胞は放射線や化学物質など様々な攻撃にさらされています。DNAが攻撃によって修復不能な大きな傷がつくと、がん細胞化する可能性が高くなります。
このとき細胞内のミトコンドリアが「細胞を殺せ」という指示物質を放出し、細胞やDNAを分解するタンパク質が活性化し、細胞死に至らせます。
このような細胞死を「アポトーシス」と呼びます。
外からやってきた細菌が、こんな役割を果たしているなんてねえ...

しかし、細菌Bが細菌Aを取り込んだことは、良いことだけではなかったのです。
細菌Aは酸素呼吸を行う「好気性生物」で、細菌Bは酸素を嫌う「嫌気性生物」です。
この性質は、真核細胞とミトコンドリアの関係になっても変わっていません。
例えばヒトは、肺から吸い込んだ酸素を血液によって運んで、体内の細胞に取り込み、ミトコンドリアは、これを使って糖や脂肪を分解していく過程でエネルギーを得ますが、これは「有害な酸素」を摂取し、ミトコンドリアまで届けなければならないことを意味します。

またミトコンドリアが、酸素を使ってエネルギーを取り出すとき、どうしても酸素が外に漏れてしまい、それは「活性酸素」(通常の酸素分子より反応性が高い酸素化合物ないしは酸素原子)となって、細胞に有害な作用をします。
これが老化やガンの原因になると考えられています。また糖尿病や、高血圧、心臓病といった生活習慣病も、活性酸素の増加が引き金になっているといわれています。

さらにはミトコンドリアの機能が低下して、エネルギー生産が出来なくなると「ミトコンドリア病」と総称される様々な病気を引き起こすことがいわれています。
記憶力や知能の低下、筋力の低下、また肝機能障害や、貧血、心筋症、視力低下など体のあらゆる部分で症状が現れます。
細菌AとBの合体によって、大きなエネルギーや機能を獲得した代償ということでしょうか。


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クモの糸は強くて伸び~る!

芥川龍之介の小説「蜘蛛の糸」は、地獄に落ちて苦しむ悪人が、仏様の垂らしたクモの糸につかまって、地獄から脱けだそうとした話ですが、クモの姿形の奇怪さや、クモの糸の強靭さで、いろいろな物語や映画などで題材にされています。最近では「スパイダーマン」なんて映画で、強くそして長~く伸びる糸が、主役?になっていますね。

くも4.jpg
一口にクモの糸といっても、実はいくつかの種類があって、クモは用途に応じて異なる性質の糸を使い分けているのです。
巣の中央から放射状に伸びる糸は「1.縦糸」といいます。その縦糸は巣全体を囲う「2.枠糸」に留められています。枠糸はまた「3.係留糸」によって木の枝などに留められます。
これらの糸は、いわば巣の構造をなしています。粘着性はありません。
縦糸を繋ぐように、ぐるぐると円形に張られるのが「4.横糸」です。
横糸は「粘着球」という粘着性の球状物質が並び、これによって獲物を絡めとります。
横糸はまた良く伸びるのが特徴です。
巣の中央には、クモがとまる「こしき」と呼ばれる部分があって「5.こしき糸」という粘着性のない糸でできています。
そしてクモ自身がぶら下がる糸が「6.牽引糸」です。牽引糸は最も強い糸です。
牽引糸の端は粘着性の強い糸でできた「付着盤」で、木の枝やこしきに固定されています。
ほかにもクモの卵を囲う「卵のう」に使う糸、巣にかかった獲物をぐるぐる巻きにする「捕獲帯」に使う糸など、クモはその用途に応じて、様々な糸を使い分けているのです。

クモの糸がどれくらい強いかというと、まず「引張り強度」ですが、「高張力鋼」という、自動車の車体などに使われる特別に強い鉄合金の数倍にも達します。
また「引っ張り強さ ÷ 密度」であらわす「比強度」は、炭素繊維を上回ります。
比強度が大きいほど、軽いわりに強い材料です。
「伸度」は、糸の伸びやすさを示します。糸が切れるまで伸ばし、元の長さの何%まで伸ばすことが出来るかを計ります。くも糸の中では比較的伸びにくい牽引糸の伸度は30%あり、良く伸びる繊維であるナイロンを超えます。

ではクモ糸はどのように出来ているのでしょうか?
クモの糸は「フィブロン」というタンパク質で出来ています。フィブロン分子は、一つの分子の中に、異なる性質を持つ二つの部分があります。
一つはアミノ酸配列が非常に規則的に並んだ部分で、もう一つはその規則性に乱れがある部分です。この二つの部分が繋がったものを一つの単位として、それがまた何十も繋がったものが、一個のフィブロン分子になります。
そのフィブロン分子が多数撚り集まって、一本のクモの糸になります。
そしてアミノ酸配列の規則性が高い部分は、ぴったりとくっつきあって結晶を作っていて、フィブロン分子が固く結びつくため、強い糸になり、また規則性に乱れがある部分は、絡まりあって伸び縮みするため、糸は良く伸びることができます。

またクモは糸をつむぐときに、自身で糸の加工をします。
クモはその腹部に出糸突起という器官を持ち、その先端近くに多数の小さな突起、出糸管があり、その先端から糸が出ます。出糸管それぞれから出る糸に違いがあり、クモは用途に応じて使い分けています。また出糸管から出た糸を、手や体を使って伸ばし、フィブロン分子の向きをそろえて、強さを増すように加工しているのです。

このように、強くて、軽く、伸びやすいクモの糸を、産業素材として使えないかと研究されてきましたが、上手くいきませんでした。クモは同じところに集めると共食いをする、またクモに一つの種類だけの糸を出させて集める方法がないなどいくつかの理由によります。
小さなクモから、まとまった糸を取るのは大変なのです。
同じ虫でもカイコが、一か所で大量に育てられ、また大量の糸を自分の体の回りに繭として作り、人間はその繭から、簡単に糸を採取することが出来るのに...

ところが、何とこのカイコにクモ糸を作らせることに成功したそうです。
クモ自体から糸を取るのではなく、クモの糸のタンパク質(フィブロン)を作る遺伝子をカイコに組み入れて、強く切れにくい糸を作ることに成功したそうです。名づけて「クモ糸シルク」。普通のシルクに比べて「切れにくさ」が1.5倍になったということです。

これは遺伝子組換えという、食用植物でよく使われる方法です。
遺伝子組換えとは、生物に別の生物の遺伝子を組み込んで、その性質を持つようにする人工的方法です。日本では依然、遺伝子組み換えに抵抗感を持つ人が多いのですが、このクモ糸の遺伝子を組み込んだ生糸は、生態系に与える影響を調べる必要はありますが、人の食する生物ではないため、そういった不安や抵抗は少ないと思われます。

驚くようなクモ糸シルクの開発ですが、実はクモ糸の遺伝子を組み込むことは、カイコ以外の他の生物にも行われています。
微生物に組み込み、フィブロンを量産することに成功したベンチャー企業があります。
クモ糸の遺伝子を組み込んだ微生物を、発酵タンクの中で大量に培養して、フィブロンを作り、これを精製し、溶媒で溶かし、そして繊維やフィルム、パウダーなどの形状にします。
この新素材を名付けて「Qmonos」(クモの巣)。すでに量産化もされていて、強度が高く伸縮性に富んだこの新素材の使い道は広く考えられます。
長い間、かなわなかったクモ糸の利用が、随分現実性を帯びてきたようです。

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