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省エネ住宅と窓1

現在の省エネルギー住宅の考えは、まずは断熱ありき、ということのようです。
しっかりと家を断熱し、冬は外の寒気を、夏は外の暑気を入れないようにして、暖冷房等の機器を効率良く稼動させ、そして内の暖気または冷気を外に逃さないようにする、という考えです。

―窓の断熱を高めよう―
その断熱は壁や屋根、床の断熱を第一に考慮されますが、ここで大事なのは窓の断熱です。
窓の主な機能は、光と風(空気)を通すことです。
ガラスは光を通すことに特化したような材料ですが、風は通さないので、窓を開けるという操作でそれを行います。サッシ(窓枠)の主な機能は、そこにあるともいえます。
しかし断熱を考えると、ガラスは光を通すという特性上、赤外線(熱線)も通す(輻射)うえ、熱伝導も良いのです。またサッシは、現在最も多く使われるアルミは金属ですので、これもまた極めて熱伝導が良いのです。したがって断熱の観点からは、ガラスとサッシは大きな課題となります。

熱の通り易さ(難さ)を表す数値に、「熱貫流率(U値)」というものがあります。
単位はW/㎡K(Wはワット、Kはケルビン)で、対象材料の内側と外側の温度差が1℃の場合において、1㎡あたり貫入(通過)する熱量Wを表します。
これによると、厚さ100ミリの断熱材を使った壁の熱貫流率は、0.38W/㎡Kになります。
また窓は通常のアルミサッシの窓では、6W/㎡K程度が一般的ですが、「次世代エネルギー基準」では、これより性能の高い4.65W/㎡Kの窓の採用を推奨しています。
ここでもう明らかなのは、窓の熱貫流率は断熱壁の12~16倍にもなるということです。

実際に簡単な家屋を例にして計算をしてみます。
平面が3.6m四方で高さ2.4mの平屋で平屋根、そして一面が全面窓とします。
表面積は屋根と床が3.6×3.6×2=25.92㎡、壁が2.4×3.6×4=34.56㎡、計60.48㎡です。
そのうち窓面積は3.6×2.4で8.64㎡で、壁・床・天井面積は60.48㎡-8.64㎡で51.84㎡です。
窓以外のすべてに100ミリの断熱材を使い、同じ熱貫流率とします。

ここで「外皮平均熱貫流値(UA値)」を求めます。
これは壁や床、窓などの外皮各部位から逃げる熱貫流を合計し、外皮面積で割って求めます。
壁・床・天井の熱貫流率は0.38W/㎡K、窓の熱貫流率は4.65W/㎡Kとします。
壁・床・天井の合計熱貫流は0.38×51.84=19.70(W)で、窓は4.65×8.64=40.18、合わせて59.88になります。これを外皮面積で割ると、UA値は59.88/60.48=0.99になります。

この場合、窓面積は全体の14%に過ぎないのに、熱貫流の割合は67%にもなってしまいます。
せっかく、壁・床・天井を断熱していても、窓から殆どの熱が出入りしているということです。
どうするか? 考えられるのは窓面積の縮小と窓の断熱化です。ここでは断熱化を考えます。

窓の断熱の向上に有効なものは、Low-Eペアガラスに樹脂サッシを組み合わせたガラス窓です。
Low-Eとは、Low Emissivity(低輻射)の略で、ガラス面に薄い金属箔を貼って輻射を反射させて透過を減らすガラスです。ペア(複層)ガラスは2枚のガラスの間に薄い空気層を挟んだガラスのことです。空気は輻射は透過しますが、熱伝導が大変低く、また薄い層だと、対流も起こり難いのです。通常、Low-Eガラスはペアガラスとセットになっています。
また樹脂サッシは通常のアルミに比べ、熱伝導が大変低くなります。
この3つを組み合わせることで、熱の伝わりを大幅に減らすことが出来ます。

このガラス窓の熱貫流率を、1.7W/㎡Kとします。これは通常のガラス窓の4.65W/㎡Kに比べて、約1/3程の値です。これを使って先の家屋の断熱を計算すると、
窓の熱貫流値は1.7×8.64=14.69(W)、壁・床・天井の19.70を足して34.39になります。
UA値は、34.39/60.18=0.569で、窓断熱なしと比べて、57%に減りました。

ということで、窓をLow-Eガラス&樹脂サッシにすれば、窓の熱貫流は、壁・床・天井よりも下回ることになりました。これで省エネ住宅は完成! いやちょっと待って!
確かに窓の熱貫流が大幅に減ったお陰で、住宅の断熱性能はずいぶん向上しました。
しかし面積の少ない割りには、まだ大きな熱貫流があります。じゃあ、窓もっと減らせば?
でも、そんな極地型住宅のようにして、それを省エネ住宅といって住みたくないなあ...

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ベテルギウスはいつ爆発する?

冬の夜空にひときわ大きく輝く星座、「オリオン」の星々の中で、これまたよく目立つ赤い星が「ベテルギウス」です。この星は太陽系から640光年と比較的近く、また太陽の20倍の質量という大きさのため、太陽系外では地球から唯一、その「大きさが測れる星」です。
他の星はどんなに大きな望遠鏡で見ても、すべて「点」でしかないのです。
またこの星は赤色超巨星で、近い将来(今~100万年後)に超新星爆発を起こすだろうといわれています。爆発に伴って発する超巨大なエネルギー放射は「ガンマ線バースト」とよばれ、これが地球に向かって来たら大変だと心配されたりしましたが、杞憂のようです。
他にも、明るさを変えるとか、大きさを変えるといったことで、興味が尽きない星です。
冬の夜、オリオンを眺めるたびに、今、爆発したらすごいぞ(といっても640年前の爆発を見るわけですが)と思いながら、ベテルギウスを見つめています。

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このベテルギウスが、2012年に爆発するという風評が立ちました。
この年はメキシコ先住民のマヤ族が作成したマヤ暦の最後の年であったため、世界の終末かと騒がれましたが、ベテルギウスの爆発が、その前触れだか原因だかにされた面があります。
「近い将来爆発する」といっても、今~100万年後の何時かはまったく解らないのに、それを2012年に特定したのは、そういう話に跳びつく人々と質の低いメディアなどとの合作でしょう。

マヤ暦の最後とベテルギウスの爆発という、何の関係もない事象を特定の意図のもとに繋げ、編集し、誇張や虚偽をない交ぜに架空の話を作り上げるというようなことは、昔から多くみられます。
例えば、1950年にベリコフスキーなる人物の書いた「衝突する宇宙」という荒唐無稽な宇宙論、また70年代前半に日本のルポライターが、16世紀の占星術師ノストラダムスの予言詩集を元に書いた本で「1999年に人類最後の日を迎える」と予言したお騒がせなど、枚挙の暇はありません。
これらは間違いが証明されても、信奉者の忠誠は揺るがず、また新たな信者も加わり、ずっと後まで続き、そして時と場所を変えて顔を出します。今日ではネットを中心にした様々な情報伝達によって、この手の話はあっという間に広がり、多くの人々を惑わしているのです。

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アンドロメダ銀河

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肉眼で見える一番遠い天体、「アンドロメダ銀河」です。230万光年の彼方にあります。
そんなに遠い「アンドロメダ銀河」ですが、太陽系の属する「天の川銀河」に一番近い銀河です。
数千億個の恒星から成る美しい渦巻銀河で、天の川銀河の倍くらいの大きさです。
アンドロメダ」なんて名前もいいですねえ...
秋のよく晴れた夜、北東の空に目を凝らせば、肉眼で見える銀河ですが、星と変わらない大きさで、あまり明るくもなく、かなり大きな望遠鏡でも、渦巻はよく見えません。しかし、撮影して画像処理すると渦巻が浮き上がります。

アンドロメダ銀河の直径は20万光年とも言われています。端から端まで20万光年もある想像を絶する物体を、こうやって見通しているということも、何とも不思議なことです。
また天の川銀河とは、230万光年もの距離がありますが、この2つの銀河はだんだん近づいていて、40億年後には衝突し、そして合体するのだそうです。

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量子コンピューター2

前回は量子コンピューターの理解には欠かせないとされている、量子の二面性や重ね合わせ状態などについてでした。かなり端折りましたが... で、量子コンピューターですが、始めに従来型コンピューター(古典コンピューター!なんて呼ばれてます。)についてちょっと。

1.ビットについて。ビットはbinary digit(2つの数字)から作られた言葉で、コンピューターで用いられる計算の最小単位です。1つのビットは「0」または「1」の値をとります。複数のビットを並べることで多くの数字を表現できます。2ビットでは「00」「01」「10」「11」の4通りで、これを数字の0,1,2,3に対応させて数を表せます。これを2進法といいます。
因みに「バイト」は複数のビット列のことで、現在は8ビットを1バイトとしていて、これは汎用コンピューターの祖であるIBMが採用したことで標準となりました。1バイト8ビットで256通りの値を表せます。

2.このビット列を足したり引いたりして計算(演算)を行います。1+2 は「01」と「10」を足して「11」、すなわち3です。この変換規則は「論理回路」と呼ばれるものです。
論理回路はいくつかの「論理ゲート」とよばれる部品で構成されています。論理ゲートは与えられたビットの値に対して一定のルールに従った値のビットを出力します。
与えられたビットを反転して出力する「ノット(NOT)ゲート」は、0を入力すると1を出力します。
また「アンド(AND)ゲート」は、入力ビットが2個、出力ビットが1個のゲートで、入力ビットが両方とも1だったときのみ出力ビットが1になり、それ以外の場合は0を出力します。
この2つのゲートがあれば、どんな演算もこなすことができます。ただ実際はこの2つだけでなく、排他的論理和(XOR)など、種々のゲートが使われています。

3.量子コンピューターは古典コンピューターのビットに対応する「量子ビット」を操作して演算を行います。量子ビットは0か1かだけでなく、その間の「重ね合わせ状態」、すなわち、0の状態と1の状態を同時にとることができます。
0の状態を |0>、1の状態を |1>、のように「ケット」と呼ばれる特殊な括弧の記号を使って表現されます。重ね合わせ状態は、1/√2│0>+1/√2│1>というように表せます。係数1/√2を二乗した1/2が、量子ビットを観測したときに、|0>あるいは、|1>の状態で検出される確率を表しています。

古典コンピューターの演算回路を量子ビットに拡張したのが「量子論理回路」です。
量子ビットに対して、「量子ゲート」を作用させることで演算を行います。
古典回路のノットゲートに対応するのが「回転ゲート」、そしてアンドゲートに対応するのが「制御ノットゲート」です。この2つの量子ゲートがあれば、どんな量子回路も構成できますが、「アダマールゲート」など他のゲートも使うのは、古典論理回路と同じです。
量子ゲートは、 |0>と|1>を入れ替えたり、 |1>の符号を反転させて-|1>にしたり、|0>を1/√2│0>+1/√2│1>のような重ね合わせにするなど、様々な操作をおこないます。

4.古典ビットは例えば、3つ並べた<000>や<010>といった個々の情報を個別にしか扱えませんが、量子ビットでは、|000>から|111>まで、8つの全ての状態を同時に扱えるのです。
量子ビットの数が増えれば一度にとれる重ね合わせ状態の数は爆発的に増えます。
8個の量子ビットでは2の8乗、256の重ね合わせ状態がとれます。
8量子ビット同士の足し算は、量子コンピューターでは、0から255までの全ての数同士の足し算、すなわち256×256=65536回の計算を量子並列計算によって一度に行えるのです。
このように量子コンピューターは個々の膨大な数の重ね合わせで、大規模な並列計算を同時に行うことで、超高速性を実現できます。

5.しかし...例え65536回の計算が、同時に処理が行えたとしても、一度測定すれば、その中のどれか1つの状態が確率的に選択されてしまいます。観測によって重ね合わせ状態が壊れるわけですね。それでは意味がないので、最終的に欲しい答の状態だけを取り出すために、答が測定により選択される確率を高めることが必要になります。
量子計算では測定が決定的な意味を持ち、測定という処理に至るまでに、いかにして重ね合わせ状態を効率よく処理するかを考えるのが、「量子アルゴリズム」の研究です。

6.アルゴリズムとは定められた手順のことです。アルゴリズムを記述したものがプログラムです。
コンピューターに仕事をさせる手順、アルゴリズムを具体的に「C+C」や、「BASIC」などの言語を使ってプログラムを作成します。
ところが量子コンピューターには、確定された量子プログラム言語はありません。また量子アルゴリズムも、実用性があると言われる量子アルゴリズムは、現在わずか2種類だけです。
一つは、「ショアのアルゴリズム」といって、大きな桁数の素因数分解に威力を発揮するアルゴリズムです。そしてもう一つが、「グローバーのアルゴリズム」です。

7.グローバーのアルゴリズムは、「大量のデータの中から、ある条件に合致するデータを見つける」ためのアルゴリズムで、1996年にロブ・グローバーによって開発されました。
例えば、特定の1と0がN個並んだ古典ビット列が入っているデータベース回路を考えます。
これに同じ並びのビット列を入力したときのみ、ランプが光るとします。
取り得る状態は2のN乗なので、古典コンピュータで正解を探すには、最大で2ⁿ回、平均でも2ⁿ÷2回は試行して、条件と合致するか確かめなくてはいけません。

8.量子計算ではこの2ⁿ通りの場合をまとめて一度に量子データベース回路に入力できます。
最初にN個の量子ビットが、すべて|0>の状態を量子回路に入力します。
量子ゲートで、量子ビットを重ね合わせ状態にし、そして量子データベース回路を作用させ、2ⁿのすべての組み合わせを並列演算します。そして正解のビット列を「位相反転」します。(前回見た「干渉」により、量子の波を半波長遅らすのです。)

次に「折り返し量子回路」という回路で、正解のビット列が得られる確率を高める操作を行います。
正解量子ビット列を除いて、すべての組み合わせは、1/√Nの振幅確率を持ちます。
(確率振幅を二乗した値が確率になり、その総和は1になります。)
折り返し量子回路により、正解のビット列は確率振幅が3/√Nになりますが、他のすべては2/√Nで、正解量子ビット列の確率だけが高まります。(ここんとこ跳ばしてOKです)

さらに再度、量子データベース回路に戻して、折り返し量子回路を作用させます。
この組み合わせを複数回行うことによって、正しい答えを得る確率を大きくすることができます。
グローバーのアルゴリズムでは、√N回程度の回数の連続入力で、正解の確率は、ほぼ1になり、この状態で量子ビットを観測すると、求めるビット列を見つけることができるわけです。
但しほぼ1とはいえ確率的な正解ですから、確認する必要があります。答えのビット列を量子回路に入力して、測定し、答えが位相反転していれば正解です。

データ数が増えれば増えるほど、グローバーのアルゴリズムは威力を発揮します。
100億個のデータを探索する場合、古典コンピュータは平均で50億回の探索が必要なのに対して、√100億の10万回程度の探索で済むのです。

9.以上紹介した量子コンピューターは、古典コンピューターにおけるビットや論理ゲートで構成される論理回路、そしてメモリーやレジスターなど、チューリングマシンーノイマン型コンピューターの基本的な考え方を踏襲しています。特に論理ゲートを拡張した「量子ゲート」によって演算を行うことから、「量子ゲートコンピューター」とも呼ばれています。

実は量子コンピューターと呼ばれるものは他にも、量子アニーリング( annealing、焼きなまし法)コンピューターやイジング(Ising)コンピューターなどがあります。特に量子アニーリングコンピューターは2011年、カナダのDウェーブ社によって商用化されています。
量子ゲート方式は本命でしたが、開発が難しく、実用化において他の方式に遅れをとっていました。
ところが今年11月、米IBMが発表した量子ゲートコンピューターは、「50量子ビット」という画期的な数の量子ビットを搭載しています。50量子ビットでは、2の50乗、なんと「1125兆回」の計算が一瞬で行えるのです。
さらに他の方式のコンピューターは「組み合わせ最適化問題」など解ける問題が、1つに限られた「特化型」であるのに対して、量子ゲート方式は、現在は前述のグローバーやショアのアルゴリズムに限られているものの、目指すものは「汎用型」という大きな違いがあります。
IBMの発表は、本命が一躍先頭に踊り出たということでしょうか。


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量子コンピューター1

最近メディアを賑わしているテクノロジーに「AI 」(人工知能)がありますが、それも良く解からないうちに、「量子コンピューター」なんていうのが現れ出しました。
現在のコンピューターの何億倍の能力とかいわれると、人間をはるかに超える、とてつもない代物と思えてしまいますが、多分、記事を書いているほうでも消化不良気味のフシもあり、イメージばかり先行しています。で、無謀にもここで解説を試みます...

量子(quantum)とは何か?物理学の量子論で取り扱われる物理量の最小単位のことで、光子や電子、陽子、素粒子などが量子です。
量子は波と粒子の相容れない二つの性質を持つ(二面性)摩訶不思議な存在です。
実際、昔から光は一体、波なのか粒子なのかということは、ずっと議論されてきました。
そしてこの問題の解明について、1900年ごろから、当時の傑出した物理学者たちの大発見や大論争を経て急速に発展し、量子力学という新しい物理学が誕生しました。量子力学は量子論へと発展し、今日のミクロの世界における物理学の核心分野となっています。

量子はこの「二面性」以外にも不可思議な性質が多々ありますが、その一つが、「重ね合わせ」という現象です。以下、この二面性と重ね合わせを光(子)の実験例で示します。
なおここでは光子というときは粒子を、光というときは光波の状態をいいます。

1.半透鏡というものがあります。マジックミラーとも呼ばれていて、光を半分「透過」し、半分「反射」する鏡です。半透鏡に光を当てると、透過した光と反射した光が等分の明るさになります。
では透過する経路と反射する経路それぞれに「光子検出器」を設置して、半透鏡に光子1個を当てて見ます。(現在の技術では1個ずつの制御が可能なのです。)
光子は物理量の最小単位で分割できないので、半透鏡の後か半透鏡に反射されたどちらかで検出されます。いくつも光子を当てると、半分ずつの割合で検出されるでしょう。

2.次に半透鏡と鏡を2個ずつ使って、図のような光(子)の経路を作ります。このような装置は干渉計と呼ばれます。この干渉計に光を当てるとどうなるか?
奇妙なことに出力Aに全部光が集まり、出力Bは真っ暗という状態が起こります。
これは光を波と捉えると理解されます。
光は半透鏡を透過するときに比べて、反射すると波が4分の1波長遅れます。
また鏡で反射されると2分の1波長遅れます。(これらは電磁気学で説明されます)
出力Aに到る光は上側と下側のどちらの経路を通っても、半透鏡の反射と透過と鏡の反射が、それぞれ1回ずつで同じです。したがって出力Aには波長の遅れがなく同時に到達し、両方の波が重なって元の波が表れます。
出力Bに至る光は上側経路では2回、半透鏡を透過します。また下側経路では2回とも半透鏡を反射し、4分の1ずつ波長が遅れます。つまり下側経路は上側経路に比べて2分の1波長遅れます。半波長の遅れは波を打ち消すことになり、出力Bには光が現れないことになります。
これは複数の波の重ね合わせによって新しい波形ができる「波の干渉」というものです。干渉計は光の干渉を実験する装置なのです。
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3.次に干渉計に光子1個を当てるとどうなるか?
出力Aに至る場合、上側の経路では最初の半透鏡を透過する光子の確率は2分の1で、次の半透鏡でまた2分の1、計4分の1の確率でAに到達する筈です。また下側の経路では、最初の半透鏡で反射されて2分の1、次の半透鏡を透過するのも同様に2分の1で、計4分の1の確率で光子がAに到達する筈です。上下合わせて2分の1の確率です。出力Bでも同じ2分の1の確率になります。

4.ところが...実際はすべてAに集まって、Bには全く現れないという、つまり光を当てた場合と同様の結果になります。え!何で? 粒子に干渉などない筈なのに...光子は波なの?
しかし量子論はそんな簡単な結論は出しません。1個の光子が上側経路にも下側経路にも、どちらにも存在するんだよ!そしてこれを量子が「重ね合わせ状態」にあるというのだよ!というのが量子論の説明です。うーん?

5.実験は続きます。次は干渉計の中で、光子はどうなっているかを調べるために、上側経路の半透鏡の後ろに光子検出器を置いてみます。
複数回光子を当てると、今度は半透鏡の後ろで検出される割合が半分で、残る半分のまた半分が、出力Aと出力Bに半分ずつ検出されます。逆に検出器で検出されなかった場合は、下側経路にあることになり、2つ目の半透鏡でAとBで同じ確率で検出されます。今度は光子は粒子かあ!

6.量子論では次のように説明されます。検出器で光子が「どちらの経路に存在するのかを観測」しようとすると、「重ね合わせ状態」が壊れて(これを測定による状態の収縮といいます。)単に確率的にどちらかに存在する状態、つまり3.で予測された通りの結果となります。
測定(観測)を行うと状態は壊れてしまい、状態自体はうかがい知ることが出来ないという、量子の不思議な性質が現れるのです。またまた、うーん?ですね。

因みに量子が波なのか光なのかという問題については現在に至っても結論が出ていない問題です。
観測できない現象の実態とか本質の問題は棚上げにして、観測できる事実のみを取り扱うというのが量子論の方法なのですね。
二面性とか重ねあわせといった言葉は、そのことを如実に表しているわけです。
「ある時は波、またある時は粒子、しかしてその実体は...」 昭和20年代に流行った「7つの顔を持つ男」という映画シリーズの名文句、え!知らない? をもじって言えば、「しかしてその実体は二面性」ではねえ..解からないまま、想像を巡らすしかないのが、ミクロの世界の量子の姿なのです。

なんか拍子抜けの話ですが、量子コンピューターは、このような光子や電子などの量子が、0と1、或いはオンとオフが同時に存在するというような「重ね合わせ状態」にあって、しかもそれは「観測すると壊れて確率的存在になる」という摩訶不思議な物理現象を利用して、並列の高速演算を行おうとする空恐ろしい仕組みです。
以上量子コンピューターには全く触れないで、その前提である量子についてだけで終わりました。
頭の中が「重ね合わせ状態」になっていますか?。ふ~   -続くー

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常温核融合の宴の後

「大陸移動説」が当初は科学界で否定されて、その後長い時間をかけて花開いたのに対して、好対照を成すのは「常温核融合説」です。最初は熱狂的に迎えられたものの急速にしぼみ、そして否定され、ついには疑似科学とまで言われ、消えていった説です。

核融合は太陽を始め、大方の星で恒常的に行われている現象です。
ほとんどの星は一番簡単な元素である水素が大部分を占め、そして水素の次に簡単な元素のヘリウムがずっと少ない割合で構成されています。星はその重力で中心部は超高温、高圧で、水素もヘリウムもプラズマ状態で高速で運動していて、衝突を繰り返しています。
それらの一部は衝突のエネルギーが大きくなって原子核が融合し、重水素やヘリウムになり、このときに大きなエネルギーを放出します。これが太陽や星が輝く理由です。
この原理は早くから知られていて、その成果が水素爆弾というわけです。
また核融合のエネルギーを制御したり、利用できるように、もっと穏やかな核融合を実現したいというのが世界的な研究目標で、現在も研究が続けられています。
核融合は厄介な放射性廃棄物を大量に作り出すことなく、電力を作る可能性があるからです。
現在利用されているウランの核分裂が、大量の廃棄物を生み出しているのと対照的です。

核融合はその原理は良く理解されているため、研究のほとんどは「核融合反応が起こるほどまで、陽子を近づけるための高温を作って持続させること」に集中していました。
そんな中、1989年に米ユタ大学の2人の化学者が、パラジウムと白金の棒を重水の中に入れて両電極間に電流を流し、そのエネルギーよりもずっと大量の「過剰熱」が、パラジウムから発生したと報告しました。パラジウム電極に重水素が集中していて、核融合反応が起きたと説明したのです。

大規模な実験装置や高額な費用を使わず、簡単な実験装置で核融合が実現できるというこの報告は、すぐに批判から賛同まで広範囲の反響を世界中の研究者、学界のみならず、メディアから政治経済界にまで及ぼしたのです。
多くの科学者が自分の研究を放り出して実験装置を作り、常温核融合の再現に没頭しました。

ところが数多くの追試が試みられたものの、ほとんどは過剰熱の確認ができず、過剰熱の観測に成功したという実験でも再現性は低かったのです。
核反応を示唆する若干のデータも得られたのですが、全体的に評価されるには至りませんでした。
最初の発表から4ヵ月後には、米エネルギー省に指名された委員団が、「常温核融合が発見されたことを証明する確かな証拠はない」と表明し、その後も多くの批判は続き、そして学会の権威者を含めた大勢から全面的に否定されることとなったのです。

ついには疑似科学扱いされ、一時は今世紀最大の科学スキャンダルとまで称されました。
この一連の騒動の背後には、発表者たちの極端な秘密主義や、すでに知られていたミューオン触媒核融合を研究していた科学者との研究の先取権争い、研究資金の獲得競争、化学者と物理学者の対立、マスコミの暴走、ユタ州とユタ大学の財政難を解消するための大学当局の政治的策謀など、科学とは無関係な多くの、あまりきれいとはいえない、また聴きたくもない人間的社会的な出来事が挙げられています。

余談ですが、おりしも当時の日本ではバブル経済が崩壊する時期にあたります。両者には何の関係もないけれど、大騒ぎして泡と消えたということは全く同じです。
常温核融合の話は新聞に連日掲載され、メデイアを大いに賑わしたことは鮮明に記憶しています。

疑似科学やイカサマの格好の餌食になった常温核融合。科学界からは泡と消えた筈が、ところがどっこい、その後、研究は下火になるものの、国際常温核融合学会などを中心に少数の研究者が研究を続けていました。そうした研究者たちの研究の継続により、説得力のあるデータの蓄積も進み、主要な論文の一部は査読を通った論文として科学誌に掲載されることとなっています。一方で「ネイチャー」、「サイエンス」などでは、常温核融合関連の論文掲載を拒否しています。
ひょっとすると復活する可能性がないわけではない?
ただし、それは最初に発表された夢のエネルギーを生むようなものではなく、特殊な限定された現象、あるいは違う原理による現象である可能性が高いものと考えられ、またそれであっても、まだ先の長い地道な努力が必要な研究ということのようです。


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大陸移動説が認められるまで

宇宙の始まりなどという人知を超えた現象を、人は知力を尽くして解き明かそうとします。
ビッグバンやインフレーションなどの、遥か遥か遠い昔の出来事を今、確認しようとするのです。
同じように地球での過去の現象を解明しようとして、しかもその理論が発表されてから認められるまでに、長い月日を要した例に「大陸移動説」があります。

南アメリカの東海岸とアフリカの西海岸を比べると、地形の形状がよく似ていて、もともと接近していた、あるいは繋がっていたのではないかと思いつくのは不思議ではありません。
しかしこのアイデアが理論として提出され、そして証明されるまでには、多くの研究、そして測定・観測技術の進歩が必要でした。

1912年に地質学者のウェーゲナーが、両大陸の海岸線だけではなく、大陸棚の端の形状の比較、世界中の大陸と海底の海抜レベルの比較、そして両大陸から出土した化石の比較等々、単なる海岸線の比較以上の研究結果を積み重ねて「一つの大陸が別れて移動した」との発表を行いました。

そのときの科学者達の反応は様々だったそうですが、その中でハロルド・ジェフリーズという学者が、大陸がその下にある物質の抵抗に逆らって動くために必要な力を計算し、移動は不可能であるとの結論を出しました。この計算は極めて見事な数学であったこともあって、大陸移動説否定の根拠となりました。ウェーゲナーの理論は「大陸移動のメカニズム」を欠いていたため、「移動しないメカニズム」に勝つことが出来なかったのです。

しかし大陸移動説は消え去ることはなく、アーサー・ホームズによる「大陸下の層の熱対流による移動説」すなわち、後のマントルの移動に繋がる説などが唱えられ、細々ながら生き続けたのです。

第2次大戦後、エレクトロニクスの飛躍的な進歩が起きて、地殻あるいは内部の構造の解明が進むことになりました。微弱磁場の測定によって、両大陸の古い時代の磁場が同じ方向を向いていることが測定され、また音響測深やその他多くの技術などによって、ついにプレートテクトニクス(岩盤の動き理論)がもたらされました。
地球の表面は何枚かの固い岩盤(プレート)で構成されていて、このプレートの下で、マントル(覆いという意味で、地球の核の外側を覆い、地殻の下に存在する)が対流していて、このマントルに乗って、プレートが互いに動いていると説明されたのです。
1970年始めには、プレートテクトニクス理論は確立されたものとなり、ウェーゲナーの大陸移動説が新しい形で復活したのです。その間50年余りを要しました。

この事例は多くのことを示唆しているようです。
これまでの常識を覆すような理論が現れたとき、結論を下すには不十分と思われる説を、一気に受け入れることはないという科学界の保守性。
にもかかわらず、これを即座にはねつけようとはせず、高度な証明が現れるまで判断を待とうという、開かれた姿勢。
科学理論が正しいか否かの判断は、特定の方法があるわけではなく、科学者集団の不断の検証、反証を通じて、科学者間で妥当であると支持されるかどうかによること。
科学者の間にも、ジェフリーズのような真摯な反証がある一方で、「勝手気ままな想像の産物」とか「専門家でない意見」といった、あまり論理的でない、感情的な批判があって、科学者の世界も、普通の社会とあまり変わらないということ、などなど...

大陸移動説は、カエルの子が王子様になった好例ですが、そうならなかった例も数多く、というよりずっと多くあります。1989年に発表された「常温核融合」は、まだその記憶も生々しい例です。
これも多くの教訓を残したようです。 

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マントルの探査

海洋研究開発機構の調査船に、「ちきゅう」という大きな深部探査船があります。
この船の主たる目的は、海底下の岩盤数千メートル下のマントルという層まで掘り下げて、地殻の構造を探り、大陸移動や地震、火山活動のメカニズムを探ることにあります。また海底下の生命体の探査なども目的としていて、要するに大変アカデミックな科学探査のために作られました。

この船は、他の船と比べると大きさがわかります。下の画像は三つの船のプラモデルを並べたものです。上が「ちきゅう」で、真ん中が砕氷艦「しらせ」です。そして一番下が、かの砕氷船「宗谷」です。
因みにしらせは海自所属の船なので「艦」と呼ばれます。宗谷は海保所属の「船」です。
しらせは排水量1万数千トンの、いわば普通の大きさの船ですが、それと比べると、「ちきゅう」の大きさがわかります。宗谷はなんとも小さく、笹舟といいたくなるようなサイズです。こんな船で南極まで行ったのだから大したものです。実際、南極に行く度に氷に閉じ込められたりで、難儀をしました。
3つの船とも、ヘリポートがあり、ちきゅうは船首に、しらせと宗谷は船尾にあります。

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話がそれましたが、「ちきゅう」は海底下の岩盤を何千メートルも掘って、地殻の下にあるマントルを掘削します。マントルは大陸地域で地表下約30~70 km、海洋地域で海底面下約7 km~2,900 kmまでの範囲に広がっている岩石の層で、地球内部の熱によって、流れるようにゆっくりと動いています。その動きは大陸移動や地震、火山などの活動と大きく関係しています。
しかし今まで人類はマントルを見ることが出来なかったので、「ちきゅう」による海底下マントルの掘削は非常に期待されているのです。
なお、「ちきゅう」の活動は「国際深海科学掘削計画」という、多国間科学研究協力プロジェクトのもとに、「ちきゅう」やアメリカの掘削船「ジョイデス・レゾリューション」などの船を用いて共同で行われていて、地球環境変動、地球内部構造、海底下生命圏等の解明を目的とした研究を推進しています。

今回、海底下マントル掘削の前段階ともいえる作業が行われました。
マントルは通常深い地殻下にありますが、地表にマントルが、むき出しになった場所があります。
アラビア半島東部のオマーンには、オフィオライトと呼ばれる過去の海洋プレートが、丸ごと陸に上がってきた岩体があり、その最も下層にかつてのマントルの一部を見つけることができます。
ここで陸上掘削を行いました。深さ300~400メートル掘り、岩石を総円筒状にくりぬき、それを「ちきゅう」と「ジョイデス・レゾリューション」に運び、船上で分析が行われました。
「ちきゅう」にはコンピューター断層撮影装置、蛍光X線分析装置、超電導磁力計などが備えられ、岩石を構成する鉱物の組成や密度、磁性、熱伝導率などの性質が詳しく調べられました。
7月中旬から2ヶ月間、世界から延べ80人の研究者が「ちきゅう」に寝泊りしながら、24時間体制で分析を行ったということです。

「ちきゅう」が竣工したのは、2005年です。それ以来、石油やメタンハイドレート、希少金属などの資源探査などで、注目を浴びていますが、十余年経って、ようやくもっとも重要な探査の準備段階に入ったわけです。


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麹と酵母

「麹」を使った食品が人気ですが、麹って何だ?
そういえば「酵母」なんてのもあったな。どう違うの?
麹も酵母も「真菌」とよばれる分類に属します。じゃあ真菌て何?その前に細胞から。

細胞
すべての生物は「細胞」で出来ています。
細胞の中に細胞核やミトコンドリア、葉緑体などの「細胞小器官」を持つ生物を「真核生物」、これらを持たない生物を「原核生物」と呼びます。
さらにたった一つの細胞の生物を「単細胞生物」と呼び、複数の細胞で出来ている生物を「多細胞生物」と呼びます。真核生物は単細胞と多細胞の生物があり、原核生物は単細胞生物のみで、「細菌(バクテリア)」と、「古細菌(アーキア)」がそれです。
アーキアはバクテリアよりも真核生物に近縁で、DNAの複製やタンパク質合成系といった生命の基幹部分の機構が真核生物に類似しています。

前回の「ミトコンドリア」では簡単に、細菌Bが細菌Aを取り込んで真核生物が出来た、といいましたが、正確にはアーキア(古細菌)と、バクテリア(細菌)の「細胞内共生」によって真核生物が誕生したということになります。そして真核生物が単細胞生物と多細胞生物に分岐し、そこから生物の多様性がもたらされました。

因みにダーウィン以来、生物の多様性の原因は種の「分岐」にあると考えられていました。
しかし細胞内共生によって真核生物が誕生し、そして真核生物が生物多様性をもたらしたのだとすれば、種の分岐ではなく、全く逆の種の「交叉」が、多様性の重要な原因ということになります。つまり進化諸理論のうち、種の分岐にのみ基づいた進化理論は、ここでは成り立たなくなるのです。

真菌
で真菌(Fungus)ですが、真核生物の内、「キノコ、カビ(麹)、酵母」などの生物がこれに当たります。麹はコウジカビとも言われるように、カビの一種なのですね。
真菌は一般的には菌類といわれますが、原核生物である細菌と区別を明確にするため、真菌と呼ばれます。カビでも細菌より進化した生物なのです。
単細胞と多細胞の両方の生物が存在し、麹は多細胞生物で、酵母は単細胞生物です。

麹と酵母
麹と酵母は増殖した後の形態も大きく異なります。麹は糸状菌とも呼ばれ、増殖すると細かい糸がびっしり生えたような形態を作り上げます。
一方、酵母は増殖しても糸状にはならず、光沢のある丸い群落状の形態を作ります。

麹はでんぷんの糖化に優れており、日本では古くから醸造物の生産に役立っています。
日本酒や味噌、醬油は「アスペルギルス・オリゼー」(ニホンコウジカビ)が主に利用されています。
酵母はイーストとも呼ばれ、ブドウ糖を分解してアルコールや二酸化炭素を生じさせますので、酒を作ったり、パンをふっくらさせたりします。
日本酒を作るのにも、酵母は麹と共に使われます。

酒の製造
日本酒は麹と酵母の両方を使います。まず米を麹の働きによってブドウ糖へと分解します。
そして酵母がブドウ糖からアルコールを生成します。酵母はデンプンを分解できないので、麹がデンプンを糖化してブドウ糖を生成するわけです。興味深いのは、このプロセスが段階的に行われるのではなく、麹と酵母が並行して「発酵」作用を行うということです。
因みにビールは、大麦を発芽させ(麦芽に変え)ることでデンプンを糖化し、ビール酵母によって発酵させます。
ウィスキーも、麦やトウモロコシを麦芽で糖化して発酵させますが、その後に蒸留してアルコールを濃縮します。ビールもウィスキーも、日本酒と同じように、まず糖化してからアルコールを作るわけですが、これを「複発酵」といいます。ただし、糖化に麹は使いません。
ワインでは、原料であるブドウ果汁の中に、すでにブドウ糖が含まれているので、こうした糖化の工程が要らない「単発酵」だけを行います。
ここ書いていると、何か止まらなくなりそうです...

最後は発酵について
「発酵」とは、有機物を分解して、生きていくためのエネルギーを得ることです。
その反応で最終的に出来た物質が体外に排出されますが、これが発酵生産物です。
麹も酵母も発酵を行って、日本酒やしょうゆ、味噌などの発酵生産物を作るわけです。
実は発酵を行う生物は、他に沢山あります。
細菌である乳酸菌はヨーグルトを作り、また納豆菌は納豆を作ります。

すべての生物は、なんらかの方法で生きるためのエネルギーを得ているわけですが、その方法は大別して発酵、呼吸そして光合成です。細菌やカビ、麹、酵母などが発酵を行います。
発酵というと何か特別な働きに聞こえますが、仕組みは「腐敗」と同じです。人間にとって有用な場合に限って発酵と呼び、無用もしくは有害な場合を腐敗というわけですね。

麹もカビの一種ですけども、人間にとって有用ですから、麹などとも呼ばれるのでしょう。ただのカビではないぞ!というわけ。麹はまた「糀」とも書かれますが、これは「米糀」で、蒸し米に麹カビをつけて発酵させたものです。ふわふわした白い菌糸が、蒸し米を花のように覆っている様子から、「米の花」という日本漢字が作られたのです。

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ミトコンドリア

地球上のほとんどの生命は、その活動エネルギーを得るために酸素呼吸を行っていますが、酸素呼吸に欠かせないのが、ミトコンドリアという細胞器官です。

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今から15~20億年前、酸素と糖を使ってエネルギーを作る細菌(Aとします)がいました。
あるとき、別の細菌(Bとします)が細菌Aを自分の体に取り込んでしまいました。
細菌Aはエネルギーを作る能力が、細菌Bよりずっと高く、細菌Aを取り込むことによって、Bは今までより、ずっと大きなエネルギーを得ることが出来るようになりました。
また取り込まれた細菌Aも、糖と安定した環境を得ることが出来ることになりました。
何とも手っ取り早いやり方ですね。

細菌Aは細菌Bの一器官、ミトコンドリアとなり、そして細菌Bはミトコンドリアや葉緑体、細胞核などの「細胞小器官」を内蔵することとなりました。
このような細胞を「真核細胞」といいます。そして真核細胞は多細胞化し、「真核生物」として進化したのです。なお、細胞小器官を持たない細胞を「原核細胞」といいます。

ミトコンドリアは真核細胞の一器官ですが、その働きはまるで、独立した細胞のようです。
真核細胞は核にDNAを持っていますが、ミトコンドリアも独自に遺伝子を持っています。
その遺伝子は取り込まれた時に、大部分を失ったということですが、ともかくもミトコンドリア独自の遺伝子を持ち、生物が受精する時、その遺伝子は精子の一部として、卵子の中に入り、そしてミトコンドリアDNAを複写するのです。

「ヒト」の体は、60兆個の細胞で作られています。
その細胞の中には、多くの細胞小器官が内蔵されていますが、もっとも重要なものは、ミトコンドリアです。その数は、1細胞当たり100~3000個で、重さでは、ヒトの体重の1割に達するといいます。
この膨大な数量のミトコンドリアが、細胞の中で、融合したり、分裂をしたり、またミトコンドリア同士で、物質のやり取りをして、共同作業をしているのです。

しかし、細菌Bが細菌Aを取り込んだことは、良いことだけではなかったのです。
細菌Aは酸素呼吸を行う「好気性生物」で、細菌Bは酸素を嫌う「嫌気性生物」なのです。
この性質は、真核細胞とミトコンドリアの関係になっても変わっていないと考えられます。
つまり細胞は「有害な酸素」を空気中から摂取し、ミトコンドリアに届けなければならないのです。
またミトコンドリアが、酸素を使ってエネルギーを取り出すとき、どうしても酸素が外に漏れてしまい、それは「活性酸素」(通常の酸素分子より反応性が高い酸素化合物ないしは酸素原子)となって、細胞に有害な作用をします。
これが老化やガンの原因になると考えられています。また糖尿病や、高血圧、心臓病といった生活習慣病も、活性酸素の増加が引き金になっているといわれています。
大きなエネルギーを獲得した代償ということでしょうか。

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